アライグマ(Procyon lotto)は食肉目アライグマ科アライグマ属の哺乳類です。1977年に放映が開始したテレビアニメ『ラスカル』の影響でペットブームとなりましたが、放逐や逸出によって野生化しました。生態系や農林水産業への被害へ甚大な影響を及ぼすため、特定外来生物に指定されています。
記事の内容
・アライグマについて
・アライグマによる農作物被害の特徴
・被害対策方法
アライグマについて
アライグマ(Procyon lotto)は食肉目アライグマ科アライグマ属の哺乳類です。1977年に放映が開始したテレビアニメ『ラスカル』の影響でペットブームとなりましたが、放逐や逸出によって野生化しました。生態系や農林水産業への被害へ甚大な影響を及ぼすため、特定外来生物に指定されています。
日本で捕獲されたアライグマの頭胴長は540~720mm、尾長は160~280mm、体重は5~10kgであり、オスはメスよりもやや大きいです。栄養状態の良い個体の体重は10kgを超える場合もあります。また、寺社仏閣などの屋根裏などへ侵入し、糞害などの被害を発生させる事例もあります(矢部ほか,2007)。
食性
アライグマは雑食性であるため、植物の果実や種子・両生類・昆虫・甲殻類・魚類など様々なものを採食します。鳥類や哺乳類を採食する事例も報告されています。トウキョウサンショウウオなどの絶滅危惧種を採食することや、タヌキやアナグマなどの在来哺乳類とえさ資源が競合することなど、在来生態系への影響が懸念されています。
行動圏
アライグマの行動圏は環境によって大きく異なり、森林や郊外では広く、市街地では狭い傾向があります。また、オスはメスよりも広い行動圏を持つ傾向があります。オスの行動圏はメスよりも広く排他的であり、オスの行動圏には複数のメスの行動圏が含まれています。
繁殖生態
アライグマは高い繁殖力を持っており,1歳の妊娠率は77.8%,成獣では約90%と高い妊娠率です。アライグマの交尾期は2〜3月に迎え,出産時期は2〜10月(ピークは3〜4月)に出産します。鎌倉市の事例では,出産時期は2〜5月と6〜10月の二極性があると報告されています。アライグマは1回の出産で1〜7頭(平均3〜5頭)の子を出産します。
アライグマによる農作物被害
農作物被害金額
アライグマは雑食性であるため穀物類や果菜類・葉菜類・根菜類・果樹などの農作物に被害を与えます。特にトウモロコシやスイカ・カキ・ブドウなどには多くの被害が発生しています。また、観賞用のキンギョやコイなどにも被害が発生する場合があります。
アライグマの農作物被害額は全国で約3億5千万円発生しており、主に野菜類や果樹に多くの被害が発生しています。
私の菜園ではアライグマ被害は発生していませんが、付近でも目撃されているため、出没状況を注視しています。
アライグマ被害対策
アライグマは樹上などに登ることができるため、物理柵(ワイヤーメッシュ・ネット柵等)は効果がありません。そのため、効果的な防除には電気柵や複合柵(電気柵・物理柵)を設置する必要があります。
電気柵
電気柵はアライグマが柵線に触れることで電流が流れる仕組みです。設置場所の地面が乾いていたり、コンクリートやアスファルトである場合は、通電性が低くなるため、通電性のある素材を敷く必要があります。アースは湿った場所に深く埋め込み、間隔を空けて設置します。
アライグマ対策では2段(地上から5cm・10cm)設置する必要があります((株)農文化プロダクション,2018)。タヌキやアナグマの被害が複合して発生している場合には、電気柵の柵線を増やすなどして対処する必要があります。
1段目の地上からの高さが低いため雑草等による漏電が発生しやすい点に注意が必要です。そのため、草刈りなどの維持管理を適切に行い、柵線に流れる電圧が下がらないようにすることが重要です。
複合柵(物理柵・電気柵)
複合柵はワイヤーメッシュなどの物理柵と電気柵を組み合わせた防護策です。複合柵の特徴は物理柵の強度と電気柵の心理的な抑止効果を兼ね備えています。
楽落くん
楽落くんは埼玉県農業技術研究センターがアライグマ、ハクビシン、タヌキ、アナグマ等の中型獣類による農作物被害を防ぐために開発された柵です。収穫時期を迎えた畑に素早く設置し、収穫終了後は撤収可能な簡易的な柵です(埼玉県農業技術研究センター,2021)。
埼玉県農業技術研究センターHP
参考文献
- (株)農文協プロダクション(2018).野生鳥獣被害マニュアル ーアライグマ、ハクビシン、タヌキ、ヌートリア(中型獣類編)ー.96pp.
- 埼玉県農業技術研究センター(2021).アライグマ、ハクビシンなどの中型動物の農作物被害防止柵 楽落くん設置マニュアル ver3.0.8pp.
- 矢部辰男 & 渋谷良文. (2007). 鎌倉市内の一寺院におけるアライグマの侵入防止工事と糞内容物分析. ペストロジー, 22(1), 13-14.