鳥害対策

【カラス被害】カラスによる夏野菜被害と対策|ハシブトガラス・ハシボソガラス

 日本には約10種類のカラス類が分布(渡り鳥も含む)していますが、主に農作物被害が問題になるのはハシブトガラスとハシボソガラスの2種類です。ハシブトガラスは体長が大きく嘴が太く湾曲しており、ハシボソガラスは体長が一回り小さく嘴が細いカラスです。本記事では、カラスの夏野菜被害の特徴と対策について紹介します。

記事の内容

・カラスによる夏野菜被害の特徴

・被害対策方法

日本に生息するカラス

 日本には10種類のカラスが生息(渡来)しており、主にハシボソガラスハシブトガラスの2種類が農作物へ被害を及ぼします。

ハシボソガラス

 ハシボソガラスCorvus corone)は九州以北に分布する留鳥で、平地から山地の農耕地・河原・草地などに生息しています(水谷・叶内,2017)。雑食性で主に昆虫等の無脊椎動物や草本・木本植物の種子などを採食します(後藤ほか,2015)。また、都市部では人間の出したゴミを荒らすなど問題となっています。

ハシブトガラス

 ハシブトガラスCovus macrohynchos)はほぼ全国に分布する留鳥で、海岸から高山帯にいたるまで広く生息しています(水谷・叶内,2017)。雑食性で主に昆虫等の無脊椎動物や草本・木本植物の種子などを採食します(後藤ほか,2015)。また、都市部では人間の出したゴミを荒らすなど問題となっています。

カラスによる農作物被害

カラスによる農作物被害金額

 カラスによる農作物被害金額は果樹や野菜を中心に年間約14億円発生しています(農林水産省HP)。家庭菜園であってもカラスが好む果樹や野菜を栽培する場合にはカラス対策が必要です。

カラスの被害にあう夏野菜

 カラス類の被害にあう主な夏野菜にはスイカ・メロン・キュウリ・ナス・トマト・マメ科(インゲン・ソラマメ等)などがあります。また、穀類ではトウモロコシにカラス被害が発生します。

 トウモロコシやマメ科では、芽生えした苗を引き抜き、種子の部分を食べられる被害も発生します。

 カラスの被害の特徴として、クチバシを使って採食するため、V字のような跡が残ります。

クチバシでつつかれて穴が開いてしまう

菜園内で食害することが多い

菜園内で食害するほか、くちばしで咥えて持ち去ることもある

被害対策方法

 被害対策方法には防鳥ネットなどで農地全体を守る方法と、カラスの被害を受けやすい作物のみを守る方法があります。対策にかけられる費用や設置・維持管理のコストを考えて防除手法を考えることが重要です。

農地全体を守る

 農地へのカラスの侵入を防ぐ方法として侵入防止効果が高いものは、防鳥ネット等で農地全面を囲う方法です。しかし、費用や設置の手間がかかる等のデメリットがあります。また、定期的に防鳥ネットのメンテナンスが必要です。

  • 農地への侵入防止効果が高い
  • 面積が大きくなると費用や設置の手間がかかる
  • 定期的に防鳥ネットのメンテナンスが必要

防鳥ネット

 最もシンプルで効果が高いのは防鳥ネットで農地全体を囲う方法です。しかし、設置に手間やコストがかかること、維持管理などのメンテナンスが必要などのデメリットがあります。

テグス

くぐれんテグスちゃん

 『くぐれんテグスちゃん』は農研機構が果樹園のカラス対策を想定して開発した被害対策方法です。防鳥ネットと比較すると安価で、脚立等を用いずに設置することができます。農研機構のHPではくぐれんテグスちゃんのマニュアルが公開されています。

農研機構HP(くぐれんテグスちゃん)

くぐれんテグスちゃん

被害を受けやすい作物のみを守る

 農地全体を防鳥ネット等を設置する場合は費用や設置の手間がかかります。そのため、被害の受けやすい作物のみに防鳥ネット等を設置するとコストを抑えて設置の手間を減らすことができます。しかし、防鳥ネット等が邪魔になり農作物の管理や収穫がしづらくなるなどのデメリットもあります。

  • コストが安い
  • 設置の手間が少ない
  • 農地全体の防除ができない
  • 農作物の管理や収穫に手間がかかる

防鳥ネット

 防鳥ネットは、カラスが侵入するのを防ぐために使われる効果的な手法です。取り付けが容易で、カラスの侵入を防ぎながら植物の成長や通気性を保つことができます。スイカ等のツル性の農作物に設置する場合は、防鳥ネットに絡まないように高さを調整する必要があります。

寒冷紗(防虫ネット)

 寒冷紗は、主に野菜や果樹などの農作物を寒さや害虫から保護するために使用される薄い布です。寒冷紗を農作物の上にかけることで、カラスが直接作物に近づくことを防ぐことができます。

テグス

畑作テグス君

 『畑作テグス君』は農研機構が一般的で安価な資材を用いて、設置・撤去が短時間でできる侵入防止柵です。農研機構のHPでは畑作テグス君設置マニュアルが公開されています。

農研機構HP(畑作テグス君)

畑作テグス君

失敗例・対策

防鳥ネット

 スイカ被害対策として防鳥ネットを設置したが、スイカとの距離が近かったこと、防鳥ネットの目合いが大きかったことから、嘴をネットの合間に入れられて被害が発生しました。

 改善策として、支柱等で防鳥ネットと農作物との距離を開けること、ネットの目合いを小さくすることで被害を防げます。

失敗原因

  • 防鳥ネットとスイカとの距離が近かった
  • 防鳥ネットの目合が大きかった

参考文献

  • 後藤三千代, 鈴木雪絵, 永幡嘉之, 梅津和夫, 五十嵐敬司 & 桐谷圭治. (2015). 庄内地方におけるカラス 3 種のペリットの内容物から見た食性. 日本鳥学会誌, 64(2), 207-218.
  • 平田祐介 & 三上修. (2016). カラス類はどんな出し方のごみを荒らすのか: 函館市における事例. Bird Research12, A19-A29.
  • 水谷高英・叶内拓哉(2017).『フィールド図鑑 日本の野鳥 第2版』.株式会社文一総合出版.
  • 農林水産省