イノシシは偶蹄目イノシシ科の哺乳類で、西日本を中心とした本州・四国・九州・八重山諸島などの島嶼部に生息しています。イノシシは植物を中心とした雑食性で、植物の葉(単子葉・双子葉)やタケ類・昆虫類や両生類(カエル)・ミミズなどの動物質・堅果類(ドングリ)や植物の地下茎などを多く採食します。中山間地域ではイネ・果樹・野菜など幅広い品目で被害が発生しており、農業の継続すら危ぶまれる状況となっています。
記事の内容
・イノシシによる農作物被害の特徴
・被害対策方法
イノシシについて
イノシシは偶蹄目イノシシ科の哺乳類で、西日本を中心とした本州・四国・九州・八重山諸島などの島嶼部に生息しています。人間の土地利用の変化(耕作地の減少など)やオオカミなどの捕食者の欠如・狩猟者の減少・地球温暖化による積雪量の減少等によって分布が拡大傾向です。瀬戸内海などの海域が狭い場所では泳ぐ姿も目撃されていることから、海を渡って分布拡大していることが示唆されています(武山、2016)。
食性
イノシシは植物を中心とした雑食性で、食性には季節的な変化が見られます。春季には植物の葉(単子葉・双子葉)やタケ類を多く採食し、夏季には昆虫類や両生類(カエル)・ミミズなどの動物質の割合が増加します。秋季〜冬季にはコナラなどの堅果類(ドングリ)や植物の地下茎などを多く採食します。
イノシシ痕跡(掘り返し)
繁殖生態
イノシシは高い繁殖能力を持っており、1歳で多くの個体が妊娠(84.2%)し2歳以上ではほとんどの個体が妊娠(96.1%)します。0歳でも8.8%の個体の妊娠が確認されています(辻&横山,2014)。
一腹産子数は4.07±1.45頭であり、兵庫県では最大7頭の胎児が確認されています(辻&横山,2014)。
イノシシによる農作物被害
農作物被害金額
イノシシによる農作物被害はイネ・果樹・野菜などで発生しており、幅広い品目で被害が発生しています。中山間地域などの被害が激しい地域では農業の継続すら危ぶまれる状況となっています。
近年のイノシシの農作物被害額(全国)は減少傾向ですが、令和5年度はイネ約18億4千万円、果樹8億4千万円、野菜4億5千万円、いも類2億8千万円など合計36億3千万円もの被害が発生しています(農林水産省HP)。
イノシシ被害の特徴
根菜類
ジャガイモ被害
果樹類
クリ被害
特用林産
タケノコ被害
イノシシ被害対策
環境整備
イノシシは野菜くず等の捨て場にある、残渣等を採食することがあります。菜園を餌場と認識させないように防護柵の内側に残渣置き場を設置するなど、簡単に食べられないような対策が必要です。
物理柵
ワイヤーメッシュ
ワイヤーメッシュは、もともと建築用の資材ですが、耐久性が高くイノシシの侵入を防ぐ柵として利用されています。設置の際には地面との隙間ができないように注意し、鋼線の太さは5mm程度、格子の大きさは10cm以下が推奨されています。設置後には定期的な点検が必要です。
ネット柵
ネット柵は物理的な障害としてイノシシの侵入を防ぐ柵です。イノシシは1mの高さを超えることができるため、柵の高さは1m以上が望ましいです。ネット柵は比較的安価で設置する方が可能です。設置後には定期的な点検が必要です。しかし、イノシシに資材によってはネット柵を噛みちぎられ侵入される場合があります。
電気柵
電気柵はイノシシが柵線に触れることで電流が流れる仕組みです。設置場所の地面が乾いていたり、コンクリートやアスファルトである場合は、通電性が低くなるため、通電性のある素材を敷く必要があります。アースは湿った場所に深く埋め込み、間隔を空けて設置します。また、斜面から2m以上離して設置することで、イノシシが飛び越えるのを防ぎます。設置後には草刈りなど定期的な点検が必須です。
参考文献
- 農林水産省.農作物被害情報.(https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/hogai_zyoukyou/).
- 武山絵美. (2016). 瀬戸内海における海を越えたイノシシの生息拡大プロセス. 農村計画学会誌, 35(1), 33-42.
- 辻知香 & 横山真弓. (2014). 兵庫県におけるニホンイノシシの基本的繁殖特性. 兵庫ワイルドライフモノグラム,6,84-92.