ニホンザルは本州・四国・九州(屋久島・種子島などの島嶼部を含む)に分布している日本固有種です。雑食性で、果樹類や果菜類・根菜類・葉菜類など幅広い品目の農作物に被害を与えます。そこで本記事では、ニホンザルによる農作物被害の特徴と被害対策方法について解説します。
記事の内容
・ニホンザルによる農作物被害の特徴
・被害対策方法
ニホンザルについて
ニホンザル(Macaca fuscata)は霊長目オナガザル科に分類される哺乳類であり、本州・四国・九州(屋久島・種子島などの島嶼部を含む)に分布している日本固有種です(小宮,2002)。青森県下北半島に生息しているニホンザルは、世界的な霊長類の分布北限であることから、『下北半島のサルおよびサル生息北限地』として天然記念物に指定されています(文化庁HP)。
群れ
ニホンザルは「群れ」と呼ばれるまとまった集団で生活しており、群れはおもにメスとその子供を中心に構成されます。オスは4~6歳頃に群れを離れて単独(ハナレザル)で行動したり、オスだけのグループを形成したり、他の群れに加わるなどします。
群れの規模は生息域の環境などにも左右されますが、多くは30~50頭前後の群れを構成します。
食性
ニホンザルは雑食性で、植物の葉や果実・種子、樹皮・冬芽・昆虫・両生類・キノコなど、様々なものを採食します。
春には植物の若葉や芽・花など、夏には毒がある植物やアクが強い植物を除いた多くの植物の葉や芽・花・種子などを採食します。また、昆虫類や節足動物・両生類なども機会があれば採食します。秋にはミズキやブナ・ヤマブドウなどの植物の種子や果実を多く採食します。冬季は最もえさ環境の悪い季節で、植物の樹皮や冬芽・葉などを採食します。
雪の下の堅果類を採食するニホンザル
樹木の冬芽を採食するニホンザル
ニホンザルによる農作物被害
農作物被害金額
ニホンザルは果樹類(カキ・クリ等)や果菜類(トマト・ナス等)、根菜類(ダイコン・ニンジン等)・葉菜類(キャベツ・レタス等)など幅広い品目の農作物に被害を与えます。また、花弁類(キク・ソメイヨシノ等)やキノコ類(シイタケ)・造林木(スギ・ヒノキ)へも被害を与えることがあります。
ニホンザル被害の特徴
ニホンザルは農作物を少しかじっては捨てるような贅沢な食べ方をします。痕跡の特徴としては人間のような歯形が残ります。
ニホンザルの採食跡(シイタケ)
果樹類
野菜類
花弁類・キノコ類
ニホンザル被害対策
追払い
ニホンザルの追い払いは、農作物被害を防ぐための重要な対策です。効果的な追い払いには、ロケット花火や電動エアガンを使用し、集団で行うことが推奨されています。また、サルが人間の存在を警戒するように、根気強く山の中まで追い払うことが重要です。
しかし、仕事等で畑にいない時間帯のある家庭菜園では、サルが出没した際に追い払うことは困難であるため、防護柵の設置が現実的です。
防護柵
防獣ネット
防獣ネットはニホンザルが農地に侵入できないように物理的に防ぐ方法です。ニホンザルは防獣ネットを登って侵入することができるため、全面を囲う必要があります。面積の少ない家庭菜園では最も効果的であり、カラスなどの野鳥対策にも効果があります。
電気柵
電気柵はニホンザルが電線に触れると軽い電気ショックを与えることで侵入を防ぐ柵です。設置の際にはサルが容易に飛び越えられないように高さや電線の間隔を調整することが重要です。また、電気柵の効果を最大限発揮するためには、草刈りなどの定期的なメンテナンスが必要です。
複合柵
複合柵はワイヤーメッシュなどの物理柵と電気柵を組み合わせた防護策です。複合柵の特徴は物理柵の強度と電気柵の心理的な抑止効果を兼ね備えており、ニホンザルの侵入をより効果的に防ぐことができます。
参考文献
- 小宮輝之(2002).増補改定 フィールドベスト図鑑11 日本の哺乳類.株式会社 学研出版社,264pp.
- 文化庁.国指定文化財等 下北半島のサルおよびサル生息北限地.(https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/401/102).
- 農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構).鳥害対策.(https://www.naro.affrc.go.jp/org/narc/chougai/wildlife/howto_j.htm).
- 農林水産省.農作物被害情報.(https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/hogai_zyoukyou/).