ヒヨドリはほとんど全国の平地から山地の林・市街地・農耕地などに生息している野鳥です。果樹や野菜類等の農作物に被害が発生し、大きく年変動するすることが知られています。そこで本記事では、ヒヨドリによる農作物被害の特徴と被害対策方法について解説します。
記事の内容
・ヒヨドリによる農作物被害の特徴
・被害対策方法
ヒヨドリについて
ヒヨドリ(Hypsipetes amaurotis)は留鳥または漂鳥でほぼ日本全国に分布し、平地から山地の林、市街地や農耕地などに生息しています(水谷・叶内,2017)。全体的に灰色の羽毛に覆われており、赤褐色の頬が特徴的です。
食性
ヒヨドリは雑食性で、様々な植物の果実や花・つぼみ、昆虫類、鳥類の雛などを採食します(桜谷,2001、水谷・叶内,2017)。
サクラの蜜を採食するヒヨドリ
ヤマハゼの実を採食するヒヨドリ
ヒヨドリによる農作物被害
農作物被害金額
ヒヨドリの農作物被害は果樹や野菜類に多く発生し、大きく年変動するすることが知られています(藤岡•中村,2000、農林水産省HP)。特に冬季(1〜3月)に関東以西の平地で被害が多い傾向があります(中村,1989)。
私の菜園では数年に一度、ブロッコリーやキャベツ等の冬野菜に大きな被害が発生します。
ヒヨドリ被害の特徴
果樹
ヒヨドリはナシやブドウ・ミカン・カキなど、様々な果樹を食害します。くちばしを使って果樹をちぎったり、つついたりして食害します。私の菜園では柑橘類の被害が発生しています。
柑橘類被害
野菜
キャベツやブロッコリー、ホウレンソウなどでは葉をちぎるように食害します。キャベツは外葉だけでなく、結球部をえぐり取るように食害します。食痕にはV字のような切れ込み(クチバシ跡)が残るのが特徴的です。
また、ブロッコリー等では花蕾に糞を落とすなどの被害も発生します。
ブロッコリー被害
ヒヨドリの糞(内容物:ヤマハゼ)
ヒヨドリ被害対策
環境整備
ヒヨドリは野菜くず等の捨て場にある、葉菜類等を採食することがあります。菜園を餌場と認識させないように、コンポストを設置するなど野菜くずを簡単に食べられないような対策が必要です。
防鳥ネット
最もシンプルで効果が高いのは防鳥ネットで農地全体を囲う方法です。しかし、設置に手間やコストがかかること、維持管理などのメンテナンスが必要などのデメリットがあります。そのため、ヒヨドリ対策では被害の受けやすい作物のみに防鳥ネット等を設置することで、設置の手間を減らし、コストを抑えることができます。
ヒヨドリ対策では、30mm以下の網目の防鳥ネットを設置するのが効果的です(農林水産省,2008)。
参考文献
- 藤岡正博・中村和雄(2000).鳥害の防ぎ方.社団法人 家の光協会.
- 星川三郎. (1982). 果樹の鳥害防止について.群馬県園芸試験場報告,10,30-50.
- 桜谷保之 (2001). 近畿大学奈良キャンパスにおける野鳥類の食性. 近畿大学農学部紀要, (34), 151-164.
- 水谷高英・叶内拓哉(2017).『フィールド図鑑 日本の野鳥 第2版』.株式会社文一総合出版.
- 中村和雄, & 松岡茂. (1981). 農作物の鳥害防止への道.農業技術,36(9),391-397.
- 中村和雄. (1989). 農作物の鳥害とその回避法. 農業機械学会誌, 51(6), 117-121.
- 農林水産省生産局農産振興課環境保全型農業対策室(2008).野生鳥獣被害防止マニュアル ー鳥類編ー.(https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/manyuaru/attach/pdf/8_old_manual-3.pdf).119pp.
- 農林水産省.農作物被害情報.(https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/hogai_zyoukyou/).
- 安田慶次. (1982). ヒヨドリによる野菜の被害. 植物防疫= Plant protection, 36(2), p60-63.